1月4日
乳酸系、即ちMLFしてるシャンパーニュにぬか漬けと納豆があう。納豆には醤油をかき混ぜてもいい。なるほどフランス現地でも好評だったそうです。以外だなあ。

小泉武夫さん×杉山明日香さんの対談です。 

シャンパーニュにはピクルスよりぬか漬け。“乳酸菌つながり”なので。

 日本酒にも少し乳酸が入っていますが、目的が違うんですよね。ワインの場合は酸味をやわらかくするためにMLFをやりますが、日本酒の場合は腐敗菌を抑えるためです。むしろ、日本酒で味の決め手になる酸はコハク酸なんですよ。コハク酸って貝の味なんです。コハク酸をお湯で溶いたら、貝のお吸い物そのものです。ハマグリとかアサリとか……あの味がコハク酸です。おいしい日本酒は貝の味がするんですよ。

そういえば、おいしい日本酒を飲んだとき、なんとなく貝の味を感じたことがありますが、それってコハク酸由来だったんです

そう、日本酒の中で一番多い酸がコハク酸、その次が乳酸です。

(ぬか漬けに顔を近づけて)うわあ……飲む前からわかります!これは合う。

 (ぬか漬けを食べて、シャンパーニュをゴクリ)これは……! あらぁ……これはすごいです。口の中で違和感がありません。同じ酸だからなんですね。

 そう、強調したいのはそこなんです! 海外ではピクルスなんかが出てきますけど、ピクルスの酸はシャンパーニュのやわらかい酸を邪魔している気がして、ずっと違和感があったんです。

 確かに。ピクルスの酸は酢酸ですからね。 “発酵仮面” というあだ名を持っている私も、シャンパーニュとぬか漬けの組み合わせは初めてです。これは本当にすごい。ガンガンいっちゃうなあ……。

それともう一つ、私がよく自宅で組み合わせるのが納豆なんです。

 ええぇ……! 馬鹿な!(かなりのけぞる)

 私、納豆が大好きでしょうがないので、毎日必ず食べるんです。朝ご飯で食べることが多いのですが、夜少しつまみたいときに、シャンパーニュで合わせてみたら意外においしくて。それをぜひ小泉先生にも試していただきたくて。納豆とシャンパーニュって合わせたことありますか?

いやあ、ないです!

チーズみたいな感じと思って合わせていただければ。今日は、北海道の黒豆を使って金沢で作られている納豆をお持ちしました。まずは納豆だけでどうぞ。

泡が鼻から抜けるときに、納豆の香りをあげてくれるんです。(明日香)

 どれどれ……(箸で納豆をすくう)。納豆が先か、シャンパーニュが先か……先に納豆かな? はい、納豆が口の中に入りました! 口の中がぬるぬるです……さあシャンパーニュを飲みます!(ゴクリ) うわあ……これはこれは……「ナットク」!

今度は納豆に卵とネギを混ぜて、しょうゆをたらして召し上がってみてください。

 醤油も、たらしていいんですか?

はい。(くるくる納豆をかき混ぜる)

 あらぁ、魯山人みたいなかき混ぜ方をしますねえ。(匂いをかいで)あ、これはきっとさらに合いますよ。(一口食べる)いやあ、これは……! 酸味がまるくなっちゃって、おいしいです。すごいですね、この一体感はまるでマジックだ

 この納豆の組み合わせはフランス人のシャンパーニュの生産者の方にも試してもらったんです。やはりフランス人には納豆が苦手な方が多いんですが、この組み合わせならイケる! とお墨付きをもらいました。泡と一緒に上ってくる納豆の香りがチーズっぽい、と。

 なるほどねえ。臭いはうまい、か。